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拙訳書での「支那」という言葉の使用について

 拙訳書『テクトニック・カルチャー』では「支那」という言葉を使用している箇所があります。これについて留学生の方からこの言葉を使用する意図は?という趣旨のeメールをいただきました。

 誤解や曲解があるとよくないと思い、どなたでも目にすることのできるブログにも、回答文を載せておこうと思います。

 

 メール有難うございました。

おそらくヨーン・ウツソンの章のことをおっしゃっているのではないかと思います。

ウツソンと12世紀宋の時代に著された『営造方式』ほかの話が出てきます。

  この書の翻訳作業を行っていたのは1990年代末で、当時は岩波書店広辞苑』が信頼できる辞典とされていました。

 そこには「中国」は中華民国または中華人民共和国の略称、「支那」は一般的な地域の呼称、といったことが書かれていたと思います。

 ですので、「中国」でも「宋」でもなく、一般的地域としての「支那」という意味で用いています。「他国を侮辱」する意味はありません。

  今だと、(どこまで信頼できるかはともかく)簡易検索としてwikipediaを参照すると、 

中国 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD

(中文版 https://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9C%8B 、ハングル版 https://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%A4%91%EA%B5%AD 異なることが書いてあるかもしれませんが) 

 

 中国(ちゅうごく)は、ユーラシア大陸の東部を占める地域、および、そこに成立した国家や社会。中華と同義。

 近年は[いつ?]、中国大陸を支配する中華人民共和国の略称として使用されている[1][2][3]。現在[いつ?]ではその地域に成立した中華民国中華人民共和国に対する略称としても用いられる。

 

 とあり、二行目はかつてと同じですが、1行目はもう少し広い定義での使用も述べています。

  また

 支那 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%AF%E9%82%A3

(中文版 https://zh.wikipedia.org/wiki/%E6%94%AF%E9%82%A3 、 ハングル版 https://ko.wikipedia.org/wiki/%EC%A7%80%EB%82%98 異なることが書いてあるかもしれませんが)

 では諸説いろいろありますが、用法として 

 

1、漢民族とその土地・文化等に用いられる、王朝や政権の変遷を超えた国号としても使用可能な通時的な呼称[6]。

 

という中性的な意味で『テクトニック・カルチャー』では用いています。

またこの頁を下にスクロールしていくと「学術的な使用」という項目があり、そこでは

 

学術界における「支那(シナ)」の使用は、

概念と用語に厳密であろうという学術的態度。

シナの部分だけを指す王朝や政権の変遷を超えた国号としても、使用可能な固有名詞の呼称が存在しないこと。

等に起因するものであり、使用者側の政治的立場との関連性は見られない[47]。

 

と述べられています。

重ねて述べると「他国を侮辱」する意味はまったくありません。

 ただおっしゃるように、そのすぐ後の「言論での使用」で

 

「主に右派で使われることが多く」、「インターネット上では、中国に反感を持つ層が「シナ」を使う例が多い」

 

とも述べられ、

また、前の方に少し戻って(この言葉の)歴史という項目では、

 

「当初「支那」は同様に歴然として辱めた意がなかった。中華民国成立以前の日本公文書においてもいくつか支那の使用例は存在する[5]。しかし佐藤三郎は」「実藤恵秀も日清戦争後には日本人の「支那」という言葉には軽蔑が交じっていたと指摘している[15]。」

 

と述べられ、「学術的使用」以外に、言葉としての歴史を背負ったものであるのも事実なのだろうと思います。

 

ですので、「他国を侮辱」する意味はまったくありません。

ただ言葉としては、おっしゃるように難しい言葉かもしれません。