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ヤーコプ・フォン・ユクスキュル/クリサート『生物から見た世界』日高敏隆・羽田節子訳、岩波書店、2005年

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 前半の生得的な環世界から後半に登場する経験によって獲得される環世界、さらに作用像が知覚象を発生させる、幻覚的な環世界までが論じられる。環世界の原語はUmweltで、これは各主体にとっての知覚世界(Merkwelt)と作用世界(Wirkwelt)から形成されるとされる(7頁)。有名なマダニの例を冒頭に持ってきたのはこれが最も理解し易いからであると思われる。

 とともに、環世界は空間的なものだけでなく、時間もまた、「時間は主体が生み出したものだとはっきり述べたことは、カール・エルンスト・フォン・ベーアの功績である。瞬間の連続である時間は、同じタイム・スパン内に主体が体験する瞬間の数に応じて、それぞれの環世界ごとに異なっている。瞬間は分割できない最小の時間の器である」(53頁)であると述べられている。人間にとっての「瞬間」、最小の時間単位は1/18秒であるとされ、なぜなら触覚的にも視覚的にも聴覚的にもこれ以上小さな時間単位を人間は知覚することができないからであるという。知覚主体としての人間にとっての時間はこの1/18秒の時間が連続して形成されるものだということになろうが、たとえばベルクソンのいう「時間」なども実はこうした環世界的に構成された時間であると見ることも可能なはずである。

 同じようにして「環世界」的な空間とは、たとえば戸坂潤がその『空間論』で述べた「直観空間」つまり「空間表象」のあり方であると措定することは可能なはずである。戸坂は空間を「直観空間」、「幾何学的空間」、「物理的空間」に分類しているが、一般に「均質空間」と呼ばれるものは「測定」を解して認識される幾何学的空間以降のものと、さしあたり述べ得る。