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メモ

ルイス・マンフォード「第三章 近代建築へ向かって」『褐色の三十年』、富岡義人訳、鹿島出版会、2013

 

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こちらの書(http://rco-2.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/2013-7c39.html)の第三章、この部分(http://rco-2.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/towards-modern-.html)の和訳である。

 あらためてリチャードソン、サリヴァン、ライトという建築家を主軸とした米国建築史はマンフォードのこの書あたりで始まったのではないかと思えてくる。

 他方ではジェニーについてはほんの一言だけ、「そしてついにウィリアム・ル・バロン・ジェニーのホーム・インシュアランス・ビルディング(一八八五年)で、完全な鉄骨構造が実現され、外壁は耐力部材から耐火カーテン部材へと変わり、各部材がそれぞれの階で支えられることになったのだ」(139頁)と述べられるに留まる。しかしながらこれはかなり重要な記述ではなかろうか、というのもこれはまさにMoMAにおける「近代建築展」の主要なコンセプトを準備したものだったからであり、言いかえるなら本書の初版が出版された1931年に1932年の「近代建築展」のコンセプトがマンフォードによってほぼ出来ていたと述べ得るからであり、にもかかわらずマンフォードはそのコンセプトが生成された別のところにあたかも米国建築史の主軸があるかのように述べているからである。またヒュー・モリソンのサリヴァン評伝(http://rco-2.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/hugh-morrison-l.html)が出版されるのが1935年である。つまり1930年代に米国建築史の軸となるものが書かれたと言っても過言ではなく、その視点はつまり著者たちの「近代建築」から「近代建築へ向かって」という視点において歴史が記述あるいは組まれた、あるいは組み直されたと述べ得るものであり、それでありながらその主軸となる視点からは主要である出来事がほぼすっぽり抜け落ちており、言いかえるならその主要な出来事が主要なコンセプトの生成あるいは成立そのものでありながら、著者達の視点にはそぐわないものに見えたのであると見做し得ると述べ得る。

 とともに著者達の「近代建築」という視点はその対象である「近代建築へ向かって」いく対象とは無関係ではあり得ない。

 これをhindsightというのは可能かもしれないが、あるいは効力批評(operative criticism)と見做すことも可能なのかもしれないが、この二つの時代を行ったり来たりせねばならないとも言わねばならない。Inter-というのは、時代的にもInterであることを要求する。