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メモ

ジョン・ロック『完訳・統治二論』加藤節訳、岩波書店、2010

最終章の「統治の解体」は革命権の肯定である。統治の目的は人類に善をなすことであり、実際の統治がそこから外れていけば、人民は統治を解体して作り直す権利があるとする。「天に訴えてもよい」(原語はどういう表現なのか)と述べる。

この革命権の肯定は、前の方で述べられる「正当防衛権」の肯定とも相似している。自分の身に危害が加えられようとしているとき、相手を殺してもいいといった点である。また例えとして羊の群れに狼が入り込み、好き勝手に喰い散らかしているのを黙ってみていていいわけではない、この狼は殺していい、といったものなどは、資本主義の基礎を述べたロックの論理はスミスの「神の見えざる手」ともども正反対に一般には理解されているのか、と思わされる。

ロックのいうプロパティは「固有権」と和訳される。見ていくと「基本的人権」とよく似ているが、約100年後のフランス革命の「水平主義」が「固有」に目をむけず、むしろ否定しさえするのは、根底的に考えが異なっているからだろう。

「所有権」について論じた章には、のちにマルクスが『資本論』第一巻において分析したものの素描がすでにある。

前半の「一論」は、『聖書』に依拠して王権神授説を唱える「サー・ロバート」に対し、まったく同じ『聖書』について緻密なテキスト読解を加えながら、「王権神授説」を否定していく。

こうした方法論は基本なのだろう。

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統治二論